湯けむりの向こうに広がる熱気。北陸新幹線延伸2年の「あわら温泉街」が今、大人の滞在型リゾートへと生まれ変わる理由
あわら 温泉 街は今、かつてない活気に包まれている。2024年春の北陸新幹線福井・敦賀開業から2年が経過し、単なる「通過型の温泉地」から、じっくりと夜の街を巡り文化を味わう「滞在型リゾート」へと劇的な変貌を遂げた。夕暮れ時、提灯のやわらかな光が石畳を照らし始めると、どこからともなく出汁の香りと賑やかな歓声が漂ってくる。福井の「奥座敷」として明治16年の開湯以来愛されてきたこの場所が、なぜこれほどまでに新たな旅人を惹きつけ続けるのか。現地を歩き、進化の最前線を取材した。
湯巡りの手形を片手に路地を歩けば、伝統ある老舗旅館の暖簾と、近年相次いでオープンしたクラフトビール専門店やモダンなカフェが不思議な調和を見せる。首都圏や関西圏からのアクセスが劇的に向上したことで、週末のあわら 温泉 街には20〜30代の若者や海外からのリピーター客の姿が明らかに増えた。かつての団体宴会中心というイメージは完全に過去のものとなり、歩くたびに新しい発見が飛び込んでくる「感性を刺激する街」へとアップデートされているのだ。
屋台村「湯けむり横丁」が醸す夜の熱気。地元客と旅人が交差し、越前ガニと地酒を酌み交わす

あわら温泉の夜を象徴するのが、えちぜん鉄道のあわら湯のまち駅前に広がる「あわら温泉屋台村 湯けむり横丁」だ。赤提灯が揺れる細い路地に、串揚げ、ラーメン、おでん、創作居酒屋など個性豊かな店舗が軒を連ねる。店内のカウンター席はわずか8席ほど。だからこそ、隣り合った見知らぬ客同士が自然と肩を寄せ合い、気づけば会話に花を咲かせている。
「新幹線が通ってから、東京や海外からの一人旅のお客さんが本当に増えましたね」。そう語る店主が手際よく差し出すのは、近海で獲れた新鮮な魚介と、福井が誇る銘酒の数々。冬の越前ガニシーズンには、焼きガニや甲羅焼きの香ばしい匂いが路地いっぱいに立ち込め、夜更けまで人の波が途切れることはない。地元の常連客がおすすめの湯船や穴場の観光スポットを気さくに教えてくれる温もりも、この横丁ならではの醍醐味だ。
「74もの自家源泉」が誇る贅沢。館ごとに異なる湯ざわりと色を愉しむ

あわら温泉が他の有名温泉地と一線を画す最大の理由は、その豊富な源泉数と多様性にある。温泉街全体で共有する集中管理方式をとらず、各旅館や施設がそれぞれ敷地内に独自の源泉を掘削しているのだ。その数、実に74本。そのため、隣り合う宿であっても、微妙に成分や温度、湯の色、肌ざわりが異なるというから驚かされる。
中性〜微アルカリ性のナトリウム・カルシウム塩化物泉が多く、滑らかな湯触りで「美肌の湯」としても誉れ高い。各宿の名物風呂をハシゴする湯巡りは実に贅沢だ。庭園を眺める圧倒的なスケールの大浴場から、モダンな半露天風呂付き客室まで、温泉そのものの個性をじっくりと味わい尽くすスタイルが定着している。
路地裏に芽吹くリノベーションの風。昭和レトロとモダンカルチャーの競演

いま、温泉街の路地裏散策が面白い。昭和の面影を残す木造建築や格子戸の街並みを生かしつつ、若いクリエイターや地元事業者がリノベーションを手掛けた新しい店舗が次々と誕生しているからだ。
築80年の元置屋を改装したコーヒースタンドでは、ハンドドリップの芳醇な香りが漂う。すぐ近くのセレクトショップには、越前漆器や越前和紙の技法を取り入れた現代的なインテリア雑貨が並ぶ。足湯施設「芦湯」で足を温めながら、テイクアウトした抹茶ラテを楽しむ旅行者の姿は、今のあわらを象徴する日常の風景となった。古き良き歴史の重みと、現代のクリエイティビティが見事に融合している。
新幹線延伸から2年。二次交通の劇的進化で「周遊のハブ」へ
2024年の新幹線開業直後、課題として挙げられていたのが「JRあわら温泉駅」から「温泉街(あわら湯のまち駅周辺)」への移動手段だった。しかし2026年の現在、その問題はスムーズな二次交通ネットワークによって解消されている。
スマートシャトルバスや、電動キックボード・E-bikeのシェアリングサービスが定着し、観光客はスマホひとつでストレスなく移動できるようになった。さらに、温泉街を拠点にして、断崖絶壁で知られる「東尋坊」や、浄土真宗の聖地「吉崎御坊」、世界的な人気を誇る「福井県立恐竜博物館」へと足を延ばす旅行者が激増。温泉街は、福井北部観光の単なる立ち寄り地ではなく、旅の起点(ハブ)としての地位を確固たるものにしている。
朝の静寂と和菓子体験。昼間も魅せる温泉街の新たな表情
夜の賑わいとは対照的に、あわらの朝は穏やかで凛とした空気に包まれる。早朝の散歩では、温泉街の中心にある薬師堂から心地よい鐘の音が響き渡り、打ち水された石畳が朝日に輝く。
朝食を済ませた後は、地元の老舗和菓子店での「羽二重餅づくり体験」や、伝統の越前焼の器でいただくお抹茶体験が人気を集めている。ただ温泉に浸かるだけでなく、地域の食文化や手仕事の深みに触れられるプログラムが充実したことで、滞在の満足度は飛躍的に向上した。連泊してのんびりと過ごすワーケーション層や夫婦旅が増えているのも頷ける。
2026年、進化を止めない「あわら温泉街」へ。今すぐ訪れるべき理由
伝統を守る頑なさがありながら、新しい変化を柔軟に受け入れる懐の深さ。あわら温泉街の魅力は、まさにこの「温かい包容力」にある。北陸新幹線でアクセスがより身近になった今こそ、この街の真価を体感する絶好のタイミングだ。
日常の喧騒を離れ、湯けむりに身を委ね、心温まる美食と人情に触れる。2026年、新しく生まれ変わったあわらは、訪れるすべての旅人を特別な優しさで迎え入れてくれるだろう。 (出典: あわら 温泉 街(Yahoo!ニュース))