【2026年最新レポ】神奈川の秘境に人が押し寄せる理由。創業25周年の「ZUND-BAR」が提示する、ラーメンの枠を超えた体験型ガストロノミーの現在地
zund barは、原宿や恵比寿で世界的な人気を誇る「AFURI」の原点として、2001年に神奈川県厚木市七沢の山奥で産声をあげた。都心の喧騒から遠く離れた丹沢大山の麓。鬱蒼とした木々に囲まれた静けさの中に突如現れる、無機質でスタイリッシュなステンレスのバーカウンター。あれから四半世紀。2026年現在、ここは単なるラーメン店という概念を完全に置き去りにし、国内外の食通がわざわざ旅をしてでも訪れる「デスティネーション・レストラン」として異彩を放っている。
週末の早朝、静まり返った山あいの駐車場には、県外ナンバーの乗用車や羽田空港から直行してきた外国人旅行者を乗せたタクシーが滑り込んでくる。彼らの目当ては、阿夫利山の湧水と厳選された鶏・魚介から抽出される透き通った淡麗スープだけではない。どこか神秘的な空気感と洗練された空間演出のなかで、zund barが提供する圧倒的な非日常感を五感で堪能するためだ。時代の変化に伴い食のトレンドが目まぐるしく移り変わるなか、なぜこの山奥の一軒家は25年もの間、人々の心を掴んで離さないのだろうか。
山奥のステンレスバーが打ち砕いた「日本のラーメン観」

今でこそカフェのような内装やバーテイストのラーメン店は珍しくない。だが、25年前の創業当時はどうだったか。赤提灯や大衆食堂のような雰囲気が主流だった時代に、竹林に囲まれた山奥に突如スタイリッシュなモダン空間を出現させた衝撃は、当時の外食産業を大いに揺るがした。
一歩足を踏み入れれば、そこはまるで都会の隠れ家バー。ジャズが静かに流れる無機質な店内で、職人が一杯一杯手際よく麺を揚げ、輝くステンレスのどんぶりで提供する。食券機を置いて機械的に客を回すのではなく、空間そのものを楽しませるホスピタリティ。この「ラーメン×バー」という文化の融合こそが、後に世界各地へ展開されることとなるAFURIブランドの真の骨組みとなったのだ。
阿夫利山の天然水と厳選素材が生む「淡麗スープ」の極致

どれほど空間が優れていようと、食の真価はどんぶりのなかにある。味の要となっているのは、大山(通称・阿夫利山)の懐から湧き出る清らかな天然水だ。硬度が極めて低いこの軟水が、素材の旨味を余すところなく引き出す。
国産の丸鶏や昆布、削り節、そして新鮮な香味野菜をじっくりと煮出したスープは、雑味が一切存在しない。表面を覆う黄金色の鶏油(チーユ)が豊かな香りを立ち上らせる。2026年の今も変わらぬ看板メニュー「らーめん(まろ味・さっぱり)」は、ひと口すするだけで素材本来の甘みと旨味が口いっぱいに広がり、身体の隅々まで染み渡るような優しさを持つ。
25周年を迎えた2026年、進化する「地産地消のローカルガストロノミー」

四半世紀の節目を迎えた今年、店舗がさらに力を入れているのが地元・丹沢エリアの農家や醸造所との深遠なコラボレーションだ。かつてはスープのクオリティ追求が中心だったが、現在は地域生態系と連動したサステナブルなアプローチへと深化している。
近隣の有機農園で採れた旬の野菜をトッピングに使用するだけでなく、地元産の小麦をブレンドした自家製麺の開発や、地元の果樹園とタッグを組んだ限定スイーツなど、地域の恵みを丸ごと味わえる仕掛けが目白押しだ。単にラーメンを食べる場所ではなく、七沢という土地の風土(テロワール)を感じ取れるローカルガストロノミーの拠点へと昇華している。
ナイトタイム限定の「クラフトペアリング」という新しい挑戦
陽が落ちると、昼間とは全く異なる顔を覗かせる。2026年から新たに本格始動した「ナイトペアリングコース」は、夜の山奥まで足を運ぶ熱狂的なファンを魅了してやまない。
地元のクラフトビールや神奈川産のナチュラルワイン、さらには自家製ボタニカルシロップを使ったノンアルコールカクテルと、特製のおつまみ、そして締めのアッパーな限定ラーメンを組み合わせたペアリングメニュー。暗闇に包まれた山あいの静寂の中で、グラスを傾けながら極上のラーメンを待つ贅沢。この夜の体験は、都会の喧騒では絶対に味わえない唯一無二のエンターテインメントとなっている。
なぜ世界のZ世代トラベラーは神奈川の秘境を目指すのか
SNSや海外のライフスタイルメディアを通じて、この場所の評判は地球の裏側にまで届いている。欧米やアジア圏の若い旅行者にとって、東京の観光地を巡る定番ルートを外れ、電車とバス、あるいはレンタカーを乗り継いで七沢の山奥を訪れること自体が「本物の日本文化を探求する体験」として価値を持っているのだ。
スタイリッシュな空間と豊かな自然の対比は写真映えも抜群だが、訪れた外国人が口を揃えて称賛するのは「ディテールの美しさ」だ。水へのこだわり、器の質感、スタッフの洗練された立ち振る舞い。すべてが融合したカルチャー体験として、日本のポップガストロノミーのアイコン的地位を確立している。
名物ソフトクリームと温泉街の散策で完成する「完璧な休日」
ラーメンを堪能した後に絶対にはずせないのが、創業当時からの名物であるソフトクリームだ。濃厚なミルクの風味が際立ちつつも、後味はどこまでも爽やか。熱いスープで満たされた胃袋を優しくクールダウンしてくれる最高のフィナーレだ。
お腹を満たした後は、すぐ近くに広がる七沢温泉郷へ足を伸ばすのもいい。強アルカリ性の美肌の湯に浸かり、四季折々の山肌を眺める。都心からわずか1時間余りでアクセスできるこの場所には、忙しい日常を一瞬で忘れさせてくれるリセットの時間が流れている。25年という歳月を重ねてもなお色褪せることなく、むしろ時代の先端を走り続ける理由が、ここに来れば誰もが納得できるはずだ。 (出典: zund bar(Yahoo!ニュース))