JR加古川線の存続をかけた最前線:「西脇市駅」が描くアートと次世代モビリティの逆襲【2026年現地ルポ】
西脇 市 駅の改札口を出ると、秋の澄んだ空気に包まれたホームに1両編成のキハ40系気動車が滑り込んできた。兵庫県の中央部に位置する西脇市の玄関口。かつて播州織の産地として日本中の繊維産業を牽引したこの街の駅はいま、全国の地方鉄道がぶつかる「赤字路線の再編議論」の渦中にある。2026年、単なる乗換駅を超える新しい試みがここで動き出していた。
早朝のロータリーには、通学バッグを抱えた高校生や病院へ向かう高齢者が静かにバスを待つ。かつて織物工場へと向かう人々でごった返した西脇 市 駅の日常は、時代の移り変わりとともに穏やかなものへと変化した。しかし、現在JR西日本が進めるローカル線のあり方検討において、本駅をまたぐ加古川線の区間は重大な局面を迎えている。存廃の危機をただ指をくわえて待つのではなく、街はこの駅を舞台に起死回生のプロジェクトを打っていた。
1. 存廃の崖っぷちで立ち上がる「輸送密度」打開のアイデア
地方鉄道の存続指標とされる「輸送密度」。JR西日本が公表したデータは厳しい現実を突きつける。特に加古川線の北部区間は、モータリゼーションの深化によって利用者の減少が続いてきた。
だが、地元自治体や市民の反応は「ただ廃線を受け入れる」というものではない。2026年に入り、西脇市は単なる乗車運動にとどまらない大胆な駅周辺の活用策を打ち出した。目指したのは、駅を「電車に乗るためだけの場所」から「人が集まり目的地となる場所」へと再定義することだ。
2. 現代アートと織物の街へ:横尾忠則デザインと駅前空間の変貌

西脇市は、世界的に知られる美術家・横尾忠則氏の故郷だ。そして、200年以上の歴史を誇る「播州織」の織元が今も軒を連ねる。駅前広場に一歩足を踏み入れれば、その色彩豊かな文化のグラデーションが目に飛び込んでくる。
ラッピング列車の運行だけでなく、駅舎内部や待合室には播州織のファブリックを使ったアートインスタレーションが配置された。かつて無骨だったコンクリートの壁面は、色鮮やかなストリートアートで彩られている。列車の待ち時間そのものを芸術体験へと変える試みは、アートファンや海外からの旅行者を惹きつけ始めている。
3. 2026年、自動運転モビリティとローカル鉄道の「融合実験」

地方都市における最大の課題は、駅から目的地までの「ラストワンマイル」の足だ。2026年春、駅前のロータリーを拠点に小型の自動運転電気バスの実証実験がスタートした。
駅から市役所、さらには観光名所である「日本へそ公園」や市内の織物工房までを結ぶルート。スマートフォンアプリ一つで呼び出しが可能で、列車の到着時刻とリアルタイムで連動する。鉄路と次世代モビリティをシームレスにつなぐことで、車を持たない観光客でもストレスなく市内を回遊できる仕組みが整いつつある。
4. 播州ラーメンと新感覚カフェ:駅周辺に集まる若き起業家たち
西脇を語るうえで外せないのが、甘みのあるスープが特徴の「播州ラーメン」だ。かつて織物工場で働く女工さんたちの好みに合わせて発達したとされるこのソウルフードが、いま新しい形で駅周辺を活気づけている。
創業数十年を数える老舗の名店に加え、近年は駅近くの空き店舗をリノベーションした新感覚のスープスタンドや自家焙煎コーヒーショップが相次いでオープンした。地元産の野菜や特産品を使ったメニューを提供する若手起業家たちの姿がそこにある。旅の途中でふらりと立ち寄った旅行客と、地元の常連客が言葉を交わす温かな空間が生まれている。
5. 利用者はどう見る?地元高校生と高齢者の切実な声
現地で話を聞いた。「この電車がなくなったら、明石や神戸の大学に通うのが本当に難しくなる」と語るのは、毎朝駅を利用する高校3年生の女子生徒だ。「最近は駅におしゃれなカフェができて、放課後に勉強して帰るのが楽しみになった」と笑顔を見せる。
一方で、定期通院で駅を利用する70代の男性は切実だ。「車を返納した自分たちにとって、この路線は生命線。単に採算だけで切り捨ててほしくない」と語る。利便性の確保と経営効率化の狭間で、地域の暮らしを守るための模索は続いている。
6. 地方鉄道は生き残れるか:西脇モデルが指し示す明日
人口減少が進む日本全国で、ローカル線の存続問題は避けて通れない課題だ。赤字だからと切り捨てるのか、公的支援を入れて残すのかという二元論に、この街は新たな選択肢を提示しようとしている。
アート、歴史産業、次世代モビリティ、そして食文化。これらを「駅」というハブに集約し、地域全体の価値を高める取り組みは、全国の過疎化に悩む自治体からも熱い視線を注がれている。2026年、プラットフォームに吹く風は、ただの郷愁ではなく、明日へと続く確かな変化の匂いを運んでいた。 (出典: 西脇 市 駅(Yahoo!ニュース))